なぜ公務員は副業を禁止されているのか?理由と根拠法令をまとめてみました
全体の奉仕者として公共の利益のために働くことを義務付けられている公務員ですが、副業解禁の流れの中にあっても、その特性から副業は厳しく制限されています。
今回はそんな公務員の副業についてまとめていきたいと思います。
なぜ公務員の副業は制限されているのか
ご存知の方も多いかと思いますが、公務員の副業は法律によって制限されています。では、なぜ制限が必要なのでしょうか。
もともと公務員は日本国憲法第15条にて以下のように規定されています。
すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
要は国民全体に平等に行政サービスを提供してくださいと言っているわけですね。
また、国家公務員法や地方公務員法には公務員の副業に対する方針の根拠法令として以下のような定めがあります。
・国家公務員法 第96条
すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
・地方公務員法 第30条
すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
共通するポイントは職務への専念を義務としているところでしょう。
他にも公務員の性質や義務を規定する法律は複数あります。ここでは省略しますが、公務員の副業に関して重要な考え方としては、
・職務に専念すること
・社会的信頼を損なわないこと
・平等性を保つため、私的な利害関係は排除すること
が求められていると言えます。
以上の考え方(根拠法令)を元に、副業については以下のように定めがあります。
国家公務員の副業禁止の根拠法令
・国家公務員法第103条
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
・国家公務員法第104条
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
地方公務員の副業禁止の根拠法令
・地方公務員法第38条
職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
禁止されている副業をしていることがバレた場合
上記の法令に触れてしまった場合など、程度により以下の処分が下されます。
訓告
注意のみ。減給や査定への具体的影響は無し。
事例:2015年、大分市にてカウンターレディで月6万円を得ていたことに対して訓告処分。
戒告
不当行為を行った者として記録され、退職まで給与やボーナスの支給などの面でマイナス査定を継続する。
事例:2010年、大阪府にて数回テレビ出演し報酬を得ていたことに対して戒告処分。
減給
給与の何割かを最大6か月分継続して減額する。
事例:2008年、市川市にてビル清掃の収入を得ていたことに対して、6か月90%減給の減給処分。
停職
最大6か月仕事に従事させない処分。
事例:2013年、宝塚市にて約350戸あまりの賃貸収入を得ていたことに対し6か月の停職処分
免職
クビにする。
事例:2012年、徳島県にて警察手帳や警察バッジを売却し免職処分。
副業をする方法
公務員の副業は原則禁止ですが、許可を得ることによって行うことも可能です。
例えば国家公務員の場合、人事院へ自営兼業承認申請書という様式を提出し許可を得る必要があります。
参考までに不動産賃貸の副業を行う場合に提出する書類は以下の様式となります。
ちなみに、地方公務員は任命権者の許可を得る必要があります。
まとめ
いかがだったでしょうか?
法律で規定されている分、民間より厳しい印象もある公務員の副業ですが、公共サービスの確保やそれらを受ける国民の保護のため厳格に法律で規定されています。
公務員の人はこのことを踏まえ適切に働きましょう。