医療費控除・セルフメディケーションのポイント解説
- 医療費控除とは
- 医療費控除の条件
- 医療費控除の計算の仕方
- 医療費控除の対象
- 医療費控除の申告の仕方
- セルフメディケーション(特例)の条件
- セルフメディケーション(特例)の計算の仕方
- セルフメディケーション(特例)の申告の仕方
- まとめ
医療費控除とは
医療費控除とは確定申告や住民税(市区町村民税・都道府県民税)申告の際に税金を安く(控除)できる制度です。この二つの税金については通常、確定申告をすれば自動的に住民税にも反映されますので、一般的には確定申告をすれば済みます。ただし、住民税の申告のみをした場合には、確定申告(所得税)には自動的に反映されませんので要注意です。
なお「医療費」という名前ですが、出産にかかる費用も対象になります。
また、今までの医療費控除とは別にセルフメディケーション税制という特例が平成29年分の申告から新しく設定されました。薬の購入費の分だけ減税してくれる制度で、病気や予防、健康維持のための制度で病院にかからない人も減税しますという目的の新しい制度です。
医療費控除の条件
自分や、生計が同じ親族のために多額の医療費・医薬品購入費などの支払いがあった場合には申告してみましょう。※親族は生計が同じであれば住所や世帯が違っても構いません。
なお、申告し忘れても5年まではさかのぼって申告できます。
医療費控除の計算の仕方
まず1年間でかかった費用から、保険会社や行政などから補てんされた金額があれば差し引いて実質の負担額を出します。式にすると下のとおりです。
医療費・医薬品購入費の合計-補てん金=自己負担額
次にそこからさらに差し引く金額があります。額は原則10万円なのですが、所得が200万円以下の人は、10万円を引かずに自分の所得に5%をかけた額を引きます。例えば、所得が150万円なら7万5,000円、100万円なら5万円です。収入と所得の違いがわからない方はこの記事を参考にしてください。
ではまた式にしてみましょう。
自己負担額-10万円 or 所得の5%=医療費控除額
やっと出てきました。医療費控除はこの流れで計算できます。細かいところを省略して簡単に覚えるとすれば、「実際に負担した額が10万円超えたら申告する」でもいいかもしれません。
医療費控除の対象
次にどんな出費が対象になるのか確認していきましょう。
これは国税庁のHPにもまとめられていますので確認してみてください。
次に、対象にならないものです。箇条書きにしていきます
〇美容整形手術の費用
病気の治療ではないのでアウトです。
〇健康診断の費用
基本的にはダメですが、健康診断で病気が見つかって治療につながったものであれば例外的に対象となります。
〇タクシー代
基本的に認められませんが、電車やタクシーが使えなかった事情によっては認められる場合があります。
〇自家用車で通院する場合の駐車場代・ガソリン代
電車やタクシーがOKなら良さそうなものですが、認められません。
〇治療に直接関係のない眼鏡などの購入費用
単なる視力矯正のためでは医療費にはあたりません。
〇予防接種
インフルエンザの予防接種など、対象と勘違いされがちですがダメです。
〇サプリメント
薬ではないのでダメ。医師の処方によらない漢方もダメです。
主なものは以上となります。条件によってはOKというものもあるため、最終的には税務署職員の判断による部分もあります。
医療費控除の申告の仕方
社会保険料や生命保険料のように年末調整では取りあつかってもらえませんので、確定申告にて必要書類を提出する必要があります。必要書類は原則医療費控除の明細書のみで問題ありません。ちなみに、今までは領収書の提出を求められていましたが、平成29年分の申告から不要になりました。ただし申告した場合は5年間証拠書類として保管しておく必要があります。
また、下記の特定の費用について控除を受ける場合には別途書類が必要になります。
名目 | 必要書類 |
寝たきりの人のおむつ代 | おむつ使用証明書 |
温泉利用型健康増進施設の利用料金 | 温泉療養証明書 |
指定運動療法施設の利用料金 | 運動療法実施証明書 |
ストマ用具の購入費用 | ストマ用装具使用証明書 |
B型肝炎患者の介護にあたる同居の親族が受ける同ワクチンの接種費用 | 診断書 |
白内障などの治療に必要な眼鏡の購入費用 | 処方箋 |
市町村または認定民間事業者による在宅療養の介護費用 | 在宅介護費用証明書 |
セルフメディケーション(特例)の条件
健康の維持や病気の予防のために一定の取り組み(※1)をしていて、自分や生計が同じ親族のために特定一般用医薬品(※2)を買った場合には申告できます。また、この場合も親族の住所や世帯が違っていも大丈夫です。
※1 予防接種(インフルエンザなど)・検診(がん・メタボなど)・健康診断(人間ドック)が該当します。
※2 医療用医薬品・OTC医薬品が該当します。また、厚生労働省HPにて公表されているほか、商品のパッケージやレシートにも表記があります。
セルフメディケーション(特例)の計算の仕方
一般の医療費控除とほぼ同じですので細かい説明は省略しますが、セルフメディケーション税制では10万円は引かずに1万2千円を差し引きます。この際、所得は関係ありません。
医薬品購入費-補てん金=自己負担額
自己負担額-1,2000円=セルフメディケーション控除額
こちらも、「くすりの購入費が1万2千円を超えたら申告」と覚えておくと楽かもしれません。なお、セルフメディケーション税制の控除額は8万8,000円が限度になっています。
セルフメディケーション(特例)の申告の仕方
一般の医療費控除と同様、必要書類を提出する必要があります。必要書類はセルフメディケーション税制の明細書と健康の維持や病気の予防のための取り組みを証明できる書類になります。
取り組みを証明できる書類について
必須項目が3つ設定されています。1つは氏名、2つめは取り組みを行った年、3つめは事業を行ったところ(市区町村・医療機関・医師名など)が明記されている必要があります。具体例としては以下のとおりです。
・インフルエンザの予防接種や定期予防接種(肺炎球菌感染症など)の領収書または予防接種済証
・市区町村のがん検診の領収書または結果通知表
・職場で受けた定期健康診断の結果通知表
・人間ドックやがん検診をはじめとする各種健診(検診)の領収書または結果通知表
まとめ
いかがだったでしょうか?長期的に治療を受けている方を除けば、年間10万を超える医療費を払っている方は少ないかと思うので、頻繁に申告する人は少ないのではないでしょうか。
したがってなかなか日常で医療費控除の話題が出てくることも少なく知識がない場合も多いでしょう。控除は申告をしないと受けられませんので、該当するものがあった場合は忘れずに申告するようにしましょう。